安倍千尋展
空と空の■で

2010.10/18(mon)〜10/23(sat)
平日12:00pm〜19:00pm 土曜日12:00pm〜16:30pm


ある日、
昼の光が薄ら残る夜の始まりの時に、
橋のちょうど真ん中辺りで足が止まった。
川から吹く風は思いのほか強く冷たかった。
刻々と移り変わる淡い空に身をゆだねてみると、
行き交う街の雑踏が少しづつ消えゆき、
一瞬とても心地良い静けさがよぎった。
その時、
私が私である為に大切なコトを空は思い出させてくれた
安倍 千尋展 『空と空ので』 に寄せて
BBプラザ美術館顧問 坂上義太郎

“色即是空”を求める安倍千尋
 今春、東京の京橋にあるアートスペース羅針盤で安倍千尋の日本画と初めて出会った。私は一見して、
“色即是空”を感じた。と、ともに“色即是空”や“行雲流水”といった言葉が脳裏に浮き沈みしていた。
北海道のそら(北海道生まれ)、大阪の空(高校卒業)、沖縄のそら(芸術大学卒業)、
東京の空(美術大学院修了)、アメリカのSORA(美術教師)。
“行雲流水”を思わせるアートの旅人、安倍千尋。
再び大阪の空の下、大阪での初個展を開く。副題は空と空ので。
「時間や空の境界をテーマに作品を作っています」と凛として語る絵師、安倍千尋。
 何それにしても、画廊という物理的な条件に、絵具や絵絹に拘った日本画作品をして、
独自の時空間を創出している創作姿勢に期待したい。
履歴
安倍 千尋 Chihiro ABE  

略歴 1981 北海道函館に生まれる
2004 沖縄県立芸術大学美術工芸学科美術学科絵画専攻日本画 卒業
2006 多摩美術大学大学院博士前期課程美術研究科日本画専攻 修了
2006
〜08
ボストン東スクール、自閉症児全寮制、美術教師、USA
2009 小豆島A.I.R小豆島アーティスト・イン・レジデンス 招聘
現在 大阪在住

作品展 2006 onomatopee vol.2 アートスペース羅針盤/東京、京橋
  2007 onomatopee vol.3-回帰線上pale tone- ギャラリーエス/東京、表参道
  2008 "1st Korea.U.S.A.Japan International Art Festival-Different and Coexist"
  2009 年始小作品展 フタバ画廊/東京、銀座
  2010 ART FREEDAM EXHIBITION 横浜赤レンガ倉庫/神奈川、横浜
    羅針盤セレクション2010 アートスペース羅針盤/東京、京橋
    その他多数  

ワークショップ  
  2009 シーグラスでバス待合所の壁画制作  
    “船のあしあと”アクリル板に瀬戸内を通る船の痕跡を残す  
ART
テーマ:時間や空間の境界
襖絵では、昼と夜の間の時間の海の水平線を描いています。 タイトルにある残照は、
日没後、空に照りはえて残る夕日の光の事です。
蒲野は夕日が落ちる方向とは逆の場所に有るので空や海の色が淡く彩られ、
西側の海とはまるで違う表情を見せます。
また、晴れている日の夕刻は対岸に霧がかかり、見えてるはずの陸が見えない水平線
を見ていると、とてつも無く大きな海の前に立っている事を実感します。
昼間の強い光で見る世界と、夜の真っ暗な中で見える世界の中間にある、
短い時間しか無い夕刻に見える曖昧な世界に身を於く事でしか感じられないものを表現したいと思います。
掛軸では、小豆島の印象に残る風景を作品にしました。 タイトルは島と島の間という意味です。
テーマ:時間や空間の境界
小豆島の主に三都半島で撮影した海の写真です。
一時も同じ色、形を持たない海の表情を目にすると、
止まる事や後に戻る事の出来ない今という時間の流れを感じると同時、
目前に広がる風景を通し、自身の内部にある記憶、過去の時間を感じる時間でもあります。
船は陸や土地の境界をまたぐ事の出来るのりものですが、今と過去の境界をつなぐ存在として、
ボートの水面に映像を写しています。
テーマ:時間や空間の境界
波止場は細い道が海に出ているので、先端に立つと、まるで海の中に立っている様な 気持ちになります。
その蒲野の波止場に前にある海は、昔から漁船、客船、貨物など様々な船が通りすぎ、
それらの船は四国界隈のみではなく、日本各地へと向かっています。
また、船は海流や潮の満ち引きに合わせて動いています。
三都半島の峠に囲まれた蒲野の小さな波止場から見える船を通して、
行った事の無い場所や地球の動きを感じます。
蒲野の海を通る船の痕跡をアクリル 板に残す行為を通じて、 昔の事や、
見知らぬ場所に思いを馳せるきっかけを作りたいと思います。